怪我をした選手へ

怪我をしたとき、
「今できることを頑張ろう」
「この経験にもきっと意味がある」
そんなふうに、なんとか前を向こうとする選手もいると思います。
特に、アスリートほど
立ち止まることなく、次へ進もうとしてしまう。
もちろん、前を向くことも大切です。
それと同じくらい、無理に前を向かなくてもいいと思います。
怪我をするということは、
ただ身体を痛めるだけではありません。
大好きな競技ができない。
仲間が練習する姿を見て焦る。
このまま復帰できるのか不安になる。
目指していた大会に間に合わないかもしれない。
それまで当たり前にあったものを、
突然失う経験でもあります。
・悲嘆の4つの課題
心理学者のウィリアム・ウォーデンは、
大切なものを失ったときに向き合う心の過程として、
「悲嘆の4つの課題」を提唱しています。
① 喪失の現実を受け入れる
② 喪失の苦痛に向き合う
③ 喪失後の環境に適応する
④ 失ったものとのつながりを持ちながら、新しい生活に力を注ぐ
これは本来、大切な人との死別における悲嘆を扱った考え方ですが、
怪我をした選手の心にも重なる部分があると思います。
私自身も、選手として怪我を経験する中で、
すぐに前を向けなかった時期がありました。
特に苦しかったのは、
「今、踏ん張りたい」と思っているときに怪我をして、
踏ん張ることすらできなくなったとき。
頑張りたいのに、頑張れない。
取り返したいのに、そのための練習すらできない。
「今できることをやろう」
「この経験にも意味がある」
頭では分かっていても、
気持ちがついてこない。
周りが前に進んでいく中で、
自分だけが取り残されているように感じることもありました。
だからこそ、自分の中にある本音、
悔しい。
怖い。
焦る。
なんで自分なんだろう。
みんなが練習している姿を見るのがつらい。
そんな気持ちを否定するのではなく、
「自分はこう感じているんだ」とそっと受け取ってみてください。
「こんなことを思っちゃいけない」
「早く切り替えなきゃ」
と、無理に気持ちに蓋をしなくてもいい。
前を向くことよりも先に、
今、自分が感じていることに向き合う。
悔しいなら、悔しがっていい。
悲しいなら、悲しんでいい。
すぐに意味を見つけなくてもいいし、
無理にポジティブにならなくてもいい。
まずは、今起きていることと、
そこに対して自分が感じていることを
少しずつ受け止めていく。
そうしていく中で、
少しずつ「怪我をしている今の自分」を
受け入れられるようになっていきます。
そして、自分の中から、
「今の自分にできることは何だろう」
「ここからどう過ごしていきたいだろう」
という気持ちが出てきたときに、前を向けばいい。
目標設定も、
前を向こうとする姿勢も、
もちろん大切です。
ただ、それにはタイミングがあると思っています。
私自身、前を向きたくても
前を向けなかった経験があるからこそ、
そこを大切にしたいと思っています。
身体にリハビリの時間が必要なように、
心にも、今起きていることを受け入れていく時間が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
