ゾーンについて

「身体が勝手に動くような感覚があった」
「周りがいつも以上によく見えた」
「何をやってもうまくいった」
「気づいたら試合が終わっていた」
アスリートなら、一度はそんな感覚を経験したことがあるかもしれません。
そして一度経験すると、
「またあの時のようにプレーしたい」
「どうしたらゾーンに入れるんだろう」
と思うこともあるのではないでしょうか。
今回は、そんな「ゾーン」について、科学的な視点から見ていきます。
目次
・知っておきたい、人間の脳の特徴
私たちの周りには、常に膨大な量の情報があります。
見えているもの。
聞こえている音。
身体から入ってくる感覚。
頭の中に浮かぶ考え。
しかし、人間はそれらすべてを同時に意識して処理できるわけではありません。
一度に処理できる情報には限りがあります。
そのため、脳は多くの情報の中から必要なものを選び、そこに注意を向けています。
スポーツでも同じです。
試合中には、
相手の動き。
味方の位置。
ボール。
スペース。
残り時間。
さまざまな情報が、ものすごいスピードで変化していきます。
その中から必要な情報を捉え、判断し、身体を動かす。
これを繰り返しているのがプレー中のアスリートです。
では、そんな中で、
「ミスしたらどうしよう」
「監督にどう思われているだろう」
「絶対に結果を出さないと」
と考えていたらどうでしょうか。
その思考にも、注意は使われています。
つまり、本来プレーに使いたい意識が、過去のミスや未来の結果、周囲からの評価にも向いている状態です。
そこに注意を奪われ続けるほど、今のプレーに必要な情報へ注意を向けにくくなりパフォーマンスは発揮しづらくなります。
だからパフォーマンスを発揮する上で大切なのは、
「今、何に意識を向けるか」。
ここが、「ゾーン」を理解する上でも大切なポイントになります。
・そもそも「ゾーン」とは?
スポーツの現場でよく聞くゾーン。
心理学では、それに近い状態として「フロー(Flow)」が研究されています。ほぼ同じものだと捉えてもらって構いません。
これらは、目の前の活動に深く没頭している心理状態のことです。
代表的な特徴として、
・目の前の活動に深く集中している
・行動と意識が一体になるような感覚がある
・自分でコントロールできている感覚がある
・自分自身を過剰に意識しなくなる
・時間の感覚が変化する
などが挙げられています。

画像:著作者名 / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
また、このことからゾーンが生まれやすい条件として、
「挑戦とスキルレベルのバランス」
「明確な目標」
「行動に対する明確なフィードバック」
などが知られています。
ここでいうフィードバックとは、監督やコーチから評価されるという意味ではありません。
例えば、シュートを打てば入ったか外れたかが分かるように、自分の行動に対する結果をその場で把握できることを指します。
・「ゾーンに入ろう」とすると、ゾーンから遠ざかる?
ゾーンの特徴の中でも、アスリートにとって特に興味深いのが、
「目の前の活動への深い集中」と「自己意識の低下」です。
ゾーン状態では、
「監督にどう思われているだろう」
「周りからどう見られているだろう」
「ミスしたらどうしよう」
「結果を出せるだろうか」
といったことよりも、目の前のプレーそのものに意識が向いています。
では、
「今日はゾーンに入りたい」
「まだゾーンに入れていない」
「前の試合のような感覚になりたい」
と考えている時はどうでしょうか。
意識が向いているのは、目の前のプレーではなく、自分の状態です。
現在の研究では、
「これをすれば必ずゾーンに入れる」
という方法が確立されているわけではありませんが、入りやすい状態に整えていくことはできます。
・ゾーンを追いかけるより、「今」に集中する
過去にゾーンを経験した時のことを思い出してみてください。
プレーをしながら、
「よし、今ゾーンに入っている」
と考えていたでしょうか。
おそらく、そんなことを考えることもなく、ただ目の前のプレーに夢中になっていたのではないでしょうか。
そして試合が終わってから、
「あれがゾーンだったのかもしれない」
と気づく。
ゾーンに入れるかどうかは、自分で完全にコントロールできるものではありません。
だからこそ大切なのは、
ゾーンに入ろうとすることではなく、今この瞬間のプレーに集中すること。
結果。
周りからの評価。
過去のミス。
これから起こるかもしれない失敗。
試合中はいろいろなことが気になると思います。
それでも、
「今、自分がやるべきことは何か?」
に意識を戻していく。
次の一本。
目の前の相手。
今やるべきプレー。
ゾーンを追いかけるのではなく、
目の前の一瞬に入り込む。
その積み重ねの先に、結果としてゾーンと呼ばれる状態が生まれることがあります。
本番で自分の力を発揮するために、
まずは自分の意識が「どこ」に向いているのか。
そこから見つめてみてください。
メンタルコーチングでは今に意識が向きやすくなる状態を整えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
